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もう一度軽く頭を下げながら、それまで馬を眺めていた房一はふりかへつて相沢を一瞥した。彼は何故だか判らぬながらに、相沢の話振りから一種不快な響きを聞き分けていた。
「どこの訴訟だ。なに鍵屋、うん、相沢か」
「あ、さうだ。お茶、お茶。おい、お茶を出してくれ」
「ね、大石さん。今夜一つ私のところで慰労宴をやらうといふんですがね。あなたもぜひどうですか。この三人だけでね」
房一は苦が笑ひをした。
と、房一はほつとした面持になつて云つた。
房一は鬼倉に向つて叮重ていちように云つた。
と、練吉は、彼等のわきにさつきから立つていた今泉に向つて、揶揄やゆするやうに訊いた。どういふものか、今泉の紙衣裳はちつとも痛んでいなかつた。これといふ皺もついていなかつたし、木沓さへ完全であつた。冠をつけ、まだ笏を心持構へた恰好で、こんなに皆が疲れ切つた様子をしているにかゝはらず、今泉だけはその稍冷い感じのする四角な顎を生き生きとさせ、あのつまみ立てたやうな鼻髭さへ床屋から出て来たばかりのやうだつた。
「さうか、――そんなに何もかも、こつちでして貰つてもえゝか」
「いや、まだ」
「さうだよ、ジョン」
「困つたもんだね」
「怪我人ができたのかね」